在庫管理の4原則とは?基本を徹底して効率化【元SE解説】

在庫管理がうまくいかず、「モノが見つからない」「数が合わない」といったトラブルに悩まされていませんか? 実は、在庫管理には 「4原則」 と呼ばれる基本ルールが存在します。この4原則を徹底するだけで、在庫管理の精度は劇的に向上し、ムダなコストや時間を大幅に削減できます。
この記事では、元システムエンジニアであり日本物流学会会員でもある筆者が、在庫管理の4原則について、現場での実体験を交えながらわかりやすく解説します。
結論:在庫管理の4原則とは、「所在」「数量」「先入先出」「アクション(異常検知)」の4つを可視化・徹底することです。

1. 在庫の所在がすぐわかる(ロケーション管理)

1つ目の原則は、「どの商品が、どこにあるか」が誰でもすぐにわかる状態にすることです。これを専門用語で「ロケーション管理」と呼びます。

探す時間は最大のムダ

私がSEとして卸売倉庫のシステム導入に関わっていた頃、現場で最も多かった課題が「担当者しか商品の場所を知らない」という属人化の問題でした。ベテラン社員が休むと、途端に出荷作業が止まってしまうのです。 モノを探している時間は、生産性を生まない「完全なムダ」です。

解決策:エリアごとの住所を決める

「A-1-1」のような細かい棚番管理が理想ですが、まずは 「第1倉庫」「第2倉庫」や「1階」「2階」 といった大きなエリア単位での管理から始めましょう。 「少なくともこのフロアにある」とわかるだけで、探す範囲は限定され、業務効率は改善します。無理なく運用を定着させることが重要です。 細かく棚番を決めるのは、後々にメンテナンスや更新が困難になる可能性が高いので、大きなエリア単位での管理をおすすめします。

2. 在庫の数量がすぐわかる(正確な在庫把握)

2つ目の原則は、「今、いくつあるか」を正確に把握することです。帳簿上の在庫(理論在庫)と、実際の在庫(実在庫)が一致している状態を目指します。

ズレはなぜ起きるのか

「システム上は在庫があるのに、棚に行ったら空だった」。これはECサイト運営者にとっても、卸売業の出荷担当者にとっても、悪夢です。欠品による機会損失や、顧客からのクレームに直結するからです。 ズレの主な原因は、入出庫時の記録漏れや入力ミスです。

解決策:記録の徹底と定期的な棚卸し

入庫・出庫のタイミングで必ず記録を残すルールを徹底します。また、定期的に棚卸しを行い、ズレを早期に発見・修正する運用が必要です。 1日の業務が終わってから一括でシステムに入力するのでは遅いのです。 在庫数に即座に反映させる必要があります。

3. 先入先出ができる(品質維持)

3つ目の原則は、「先に仕入れたものから先に売る(出す)」ことです。これを「先入先出(FIFO: First In, First Out)」と呼びます。

商品価値を守るために

食品や化粧品に使用期限があるのはもちろんですが、アパレルや雑貨であっても、長期間保管すればパッケージの色褪せやホコリの付着など、品質劣化(陳腐化)のリスクがあります。 倉庫の奥に古い商品が眠ったままにならないよう、物理的な配置や出し方の工夫が必要です。

解決策:手前から取るルール

棚への補充は「奥から」、取り出しは「手前から」というルールを徹底するのが基本です。システムで管理する場合は、入荷日順に出荷指示を出す仕組みを構築します。

4. アクションのポイントがわかる(異常検知)

4つ目の原則は、「いつ、何をすべきか」が直感的にわかる状態にすることです。在庫の増減などの変化(異常)にすぐに気づき、発注や処分などのアクションを起こせるようにします。

「気づいたら在庫切れ」を防ぐ

「在庫がなくなってから慌てて発注する」という自転車操業では、欠品リスクが常につきまといます。逆に、売れていないのに発注し続けて過剰在庫になるケースも少なくありません。

解決策:発注点の可視化

「在庫が10個になったら発注する」といった基準(発注点)を明確にします。物理的には、棚にラインを引いて「ここより減ったら発注」と視覚的にわかるようにするなどの工夫も有効です。

4原則を効率よく実践するには?

これら4原則を紙やエクセルだけで管理するのは、商品数が増えるほど困難になります。ヒューマンエラーを減らし、効率的に4原則を回すには、在庫管理アプリの活用がおすすめです。

スマホで完結する在庫管理

現代の在庫管理アプリを使えば、高価なハンディターミナルがなくても、手持ちのスマートフォンでバーコードをスキャンするだけで、入出庫記録や棚卸しが可能になります。
  • ロケーション管理: 商品情報に棚番を登録し、スマホで検索可能。
  • 正確な数量: スキャンによる記録で入力ミスを防止。
  • 複数人共有: リアルタイムで在庫状況をチーム全員が見られる。
一般的なスマートフォンのカメラ性能が高く、バーコードのスキャン精度は高いので、手間をかけずに在庫管理が可能です。

筆者の視点

システムエンジニアの視点から見ても、近年のクラウド型在庫管理アプリは非常に高機能かつ低コストです。特に小規模〜中規模の現場では、大掛かりなシステムを導入するよりも、スマホアプリでスモールスタートする方が、現場の定着率も高く、費用対効果が良いケースが多いです。

まとめ:基本を制する者が在庫を制す

在庫管理の4原則は、決して難しい理論ではありません。しかし、これを 「徹底して継続する」 ことが最も難しいのです。
  1. 所在:場所を決める
  1. 数量:数を合わせる
  1. 先入先出:古い順に出す
  1. アクション:変化に気づく
まずは、自社の現場がこの4原則を満たしているか、チェックすることから始めてみてください。 もし、手作業での管理に限界を感じているなら、シンプルな在庫管理アプリの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
 
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この記事の筆者
佐藤 徳洋
日本物流学会会員、在庫管理アプリMonoCの運営を行う。
東証プライム企業のシステムエンジニアとして働いている中で、古いシステムでは令和の業務を支えられないと感じ、新しい業務のやり方を模索中。