在庫リーンネスとは?元SEが語る、ムダをなくす在庫管理5つの原則

「ウチの会社、在庫が多すぎる気がする…」
多くの経営者や現場担当者が抱えるこの悩み。実は、その根本原因は「在庫のムダ」にあるのかもしれません。
こんにちは。元システムエンジニアで、現在は日本物流学会の会員として活動している筆者が、今回は 「在庫リーンネス」 という考え方について、分かりやすく解説します。
この記事の結論を先にお伝えします。
在庫リーンネスとは、トヨタ生産方式を源流とする「リーン」の思想に基づき、在庫に潜むあらゆる「ムダ」を排除し、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」保有する状態を目指す考え方です。
本記事を読めば、あなたの会社の在庫管理を劇的に改善するヒントがきっと見つかります。
あなたの現場にも潜む!在庫管理における「7つのムダ」
リーン生産方式では、排除すべき対象として「7つのムダ」が定義されています。これを在庫管理の現場に当てはめてみましょう。

- 在庫のムダ: 言わずもがな、過剰在庫、長期滞留在庫、不動在庫そのものです。
 
- 作りすぎ(仕入れすぎ)のムダ: 需要予測を誤り、必要以上に生産・発注してしまうこと。
 
- 手待ちのムダ: 部品や材料が足りず、作業員が次の工程に進めない状態。
 
- 運搬のムダ: 必要以上の在庫の移動、仮置き、レイアウト変更など。
 
- 加工そのもののムダ: 在庫管理のために行う、本来不要な検品や再梱包作業。
 
- 動作のムダ: 在庫を探し回る、遠くまで取りに行くといった、付加価値を生まない動き。
 
- 不良・手直しのムダ: 在庫の品質劣化による廃棄や、発注ミスによる返品作業。
 
これらのムダを一つずつ意識し、削減していくことが在庫リーンネスへの道です。
在庫リーンネスを実現する5つの実践的原則
では、具体的にどうすれば「リーン」な在庫管理が実現できるのでしょうか。ここでは、その核となる5つの原則をご紹介します。
1. ジャストインタイム(JIT)
「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」生産・供給するという考え方です。後工程からの要求に応じて前工程が生産することで、作りすぎのムダを徹底的に排除します。
2. かんばん方式
JITを実現するための具体的な道具(ツール)です。後工程が「かんばん」と呼ばれる指示票を使って、前工程に必要な部品や製品を引き取りに行く仕組み。これにより、サプライチェーン全体が連動し、在庫の最適化が図られます。
3. 5Sの徹底
リーンな現場の土台となるのが5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)です。特に 整理(不要なものを捨てる)と整頓(誰でも分かるように置く) は、在庫の見える化に直結し、ムダな動作や探し物の時間を削減します。
4. 見える化
誰が見ても、どこに何がどれだけあるのか、そして正常か異常かが一目でわかる状態を作ることです。在庫量のグラフ化、ロケーション管理の徹底、問題点の赤札表示などが有効です。
5. 継続的改善(カイゼン)
現場の作業者自身が主体となり、日々の業務の中で小さな改善を積み重ねていく文化のことです。完璧な仕組みを一度に作ろうとするのではなく、全員参加で絶えずより良い方法を追求し続けます。
脱・Excel!システム化による改善イメージ

多くの現場で、Excelによる在庫管理が限界を迎えているケースをSEとして見てきました。属人化しやすく、リアルタイム性に欠けるExcel管理は、ヒューマンエラーの温床となりがちです。
もし、バーコードやQRコードを活用した在庫管理システムを導入すれば、現場は次のように変わるでしょう。
- 探すムダの撲滅: 入庫時に商品のロケーション管理を行えば、誰でも一瞬で保管場所を特定できます。「あの商品はどこ?」という会話はなくなります。
 
- 入力ミス・漏れの防止: 手作業での転記をやめ、QRコード・バーコードスキャンによる自動記録に切り替えることで、入力ミスや記入漏れが劇的に減少します。
 
- リアルタイムな在庫の見える化: 在庫数が常に複数人でのリアルタイム在庫共有によって正確に把握できるため、勘や経験に頼った発注から、データに基づいた最適な発注へと移行できます。
 
- 作業の標準化: システムが作業手順をガイドしてくれるため、新人でもベテランと同じ品質で作業でき、教育コストも削減されます。入出庫履歴も自動で残るため、トレーサビリティも向上します。
 
このように、システム化は単なる効率化ツールではありません。在庫リーンネスを実現し、現場の働き方そのものを変革する力を持っているのです。
まとめ リーンな在庫管理への第一歩
本記事では、在庫のムダをなくす「在庫リーンネス」という考え方と、それを実現するための5つの原則を解説しました。
いきなりすべてを完璧に行う必要はありません。まずはあなたの現場で、最も大きな問題となっている「ムダ」は何かを特定することから始めてみましょう。
- まずは「5S」から着手し、不要な在庫を洗い出す。
 
- Excelでの管理に限界を感じたら、在庫管理アプリやシステムの導入を検討する。
 
在庫管理アプリには、QRコード・バーコードスキャンや複数人でのリアルタイム在庫共有など、リーン化を加速させる機能が多数搭載されています。無料トライアルなどを活用し、その効果を実感してみるのも良いでしょう。
この記事が、あなたの会社の在庫管理を「リーン」に変革する一助となれば幸いです。
この記事の筆者
佐藤 徳洋
日本物流学会会員、在庫管理アプリMonoCの運営を行う。
東証プライム企業のシステムエンジニアとして働いている中で、古いシステムでは令和の業務を支えられないと感じ、新しい業務のやり方を模索中。